前回、モキストーブ(MD80Ⅱノーマル)ついて
偉そうに「薪ストーブの本質たるや」的なことまで持ち出して長々と書いてしまいました。
我ながらよくもまぁ偉そうに…
と、読み返して辟易するところではありますが…苦笑
しかしながら、情報の少ないモキストーブをほんのちょっと世に広げるお手伝いができたのではないかと思います。
しかし!!
すいませんが、このシリーズまだ終わりませんよ。
今回、犬山市を訪問し、モキストーブMD80Ⅱを見せて頂いたのですが、実はノーマル状態だけではなく、愛研さん独自の改造パーツ「iGブースター」を実装したバージョンも見せて頂きました。
それがまたちょっと面白い。
これを装着したモキストーブってのは、またちょっと違った表情を見せ、実用的にまた違った評価になってくるわけです。
というか、前回の記事だけでモキストーブを語ったとすればあまりにも片手落ちだったと言わざるを得ない、そんな燃焼の変化を見せてくれました。
今回はちょっとその辺を書いていこうと思います。
これからモキストーブを検討される方には必見の情報ですよ。
またモキストーブに対してある程度先入観をお持ちの方にとっては、その評価を再考して頂く機会になるかもしれません。
■iGブースターとは
一言で言えば、「モキストーブMD80Ⅱに取り付ける改造パーツ」です。
モキストーブMD80Ⅱを実際に使われていたユーザーさんが開発されたそうなのですが、その後、愛研さんとタッグを組み実際に製品化されたそうです。
詳しくは愛研さんのページにて解説されています。
が、かなり長文なのですが興味のある方のみどうぞ。笑
で、iGブースターです。
この写真あげていいのかな?
つまるところiGブースターってのはこんな装置です。
こういうのが炉床に設置されています。
炉床に設置されていることから、給気口→煙突の排気口のルート上で何か作用するのだろうな、ということは容易に想像できますね。
現在は愛研さんのみで販売されているそうです。(自社の設置する案件のみ)
■MD80Ⅱ(iGブースター付き)焚き付け
実際に焚いていきましょう。
今回使う薪をあらかじめ計測しました。細割り~中割(全てヒノキ)が計3.6キロです。
正直、うちのドブレ640であれば焚き付け+アルファくらいの量と樹種です。
それくらい少ない薪の量です。
焚き付けを一握り組み、牛乳パックとの切れ端で着火します。
ノーマル機と比べるとほんの少しですが、たきつけの量を多く組まれていました。
ドラフト性能が良く、簡単に炎が上がる。
iGブースターを装着したことで少なからず排気抵抗が生まれるはずなのですが、
元々のノーマル機のドラフト性能が高いこともあってか、全く問題なく立ち上がります。
炎が大きくなったら薪(細割)を追加します。
さらに薪を足します。
今回使った薪の最大がこれくらいの大きさ。
極めて順調に燃え広がっています。
やはりこの立ち上がり速度は凄い。
開始10分で天板温度200度オーバーです。
気になる煙ですが、特に視認できる煙は出ていません。
やはりモキストーブの最大の魅力。素晴らしい立ち上がりの速さですね。
iGブースターを装着していますが特にノーマル機と比べて大きな違いは感じられませんでした。
■MD80Ⅱ(iGブースター付き)本燃焼
焚き付け時はあまりiGブースターによる変化は感じなかったのですが、本燃焼になり、メラメラと炎が立ち上がるようになると
ノーマル機とは俄然、炎の表情が変わってきました。
これは開始15分くらいの姿です。
前回のノーマル機と比べて明らかに炎がきれいです。
どうきれいかと言うとノーマル機が「やや単調な炎」なのに比べ、iGブースター機は「炉内に複雑に広がる炎」な印象を受けます。
動画だとこうです。
前回の記事でアップしたノーマル機とは炎の広がり方が少し違うのがお分かり頂けると思います。
モキストーブの大きな特徴である燃焼スピードの速さが少し穏やかになりますね。
(それでもドブレ640と比べるとかなり速いですが。)
少し炎が落ち着いてから炉内の状況を見てみると、薪がどの場所でも大きなムラなく炭化し、炎をあげているのが分かります。
そして何よりこんな綺麗に撮影できるということは、
「ガラス窓が煤けていない」ということでもあります。
実は前回のノーマル機ではガラス窓が早々に曇って煤けていました。
そうです。
モキストーブは基本的にガラス窓が曇りやすい、煤けやすいという弱点があるのですが、iGブースター機ではそのデメリットが大分軽減されていると言ってよいでしょう。
となると、やはり恐らくこの辺りが「ノーマル機との違い:iGブースター機の特徴」かもしれません。
それこそノーマル機は強力な燃焼ですが、炉内の燃え方やエアーの周り方がやや偏ることがある。
対してiGブースター機は炉内のエアーのムラが少なく、満遍なく燃える。
そんな印象です。
そして天板温度はやはり400度オーバー。(写真撮り忘れました)
しかし場所によって多少ムラのあったノーマル機と比べると、iGブースター機は天板のどこを計っても熱い。
これも炉内の燃焼ムラが軽減された結果でしょう。
この3.6キロの薪でだいたい時間にして1時間ほど燃焼していました。
灰はヒノキということもあり、少ないですね。
恐らくノーマル状態のモキストーブであれば更に短い時間に燃えたのではないかと思います。
iGブースター機になり、給気の流れが多少穏やかになったからか、燃焼スピードも多少落とす事ができていました。
■iGブースターはモキストーブの炎の印象をかなり変える
実は当日、自分(ガヤ)が自分で玉切りし割り、2年乾燥させてこだわり広葉樹薪を一束ほど持参したのですが、その夜に焚いて頂いたようで、その様子が愛研大屋さんがブログにアップされていました。
それを見ると、上述した本燃焼の印象をさらに裏付けるというか、、、、
iGブースターで燃焼スピードを落とし&給気の流れを複雑化し、
さらにガヤさん自作のプレミア広葉樹薪(笑)の豊かな可燃性ガスの放出。
正直、自分が見せて頂いたヒノキの炎とはまた一段上の素晴らしい炎が出ています。
参照元:
http://aiken-makiss.hatenablog.com/entry/20180325/1521980005
どうでしょう?
モキストーブの特徴である燃焼スピードの早さはまだあるものの、かなりイイ感じの炎を出していると思いませんか。
モキストーブでありながら(失礼!!)、
「炎を楽しむ」薪ストーブの炎に近づいています。
結論として、iGブースターはモキストーブの燃焼の味つけをかなり変えるアイテムという知見を得ました。
- 給気流入の速度を下げる
- 炉内のエアーの循環を複雑にする
- それによって炎の流れもより複雑なものになる
- 炉内でムラなく燃えるため天板の場所による温度ムラも少ない
- 同様に前面までしっかりエアーが届くのでガラス窓が曇りにくい
- デメリットはどうしても排気抵抗が生まれるのでノーマル機のような過剰なまでのエアーで強引に燃やしていく事が難しい。
- (言い方を変えるとノーマル機よりも低出力型の燃焼になる)
ざっくり、自分がiGブースターに対して感じていることはコレです。
もしかしたら炉内の滞留時間が延長したことによる熱効率アップもしているかもしれません。(これはデータ取ったら面白いかもしれませんね)
→ ノーマル機を焚いた時とは時間帯も使う薪も違うので一概には言えませんが、ノーマル機と遜色ない熱量を放っていました。詳しくは次回調理編にて補足します。
■まとめ
前回の記事で書いたようにモキストーブはなかなか面白く、特徴的な薪ストーブでした。
特に強いドラフトによる給気のスピード・量に基づいた「ガンガン燃やすぜ」な燃焼とそれを可能にする本体のタフさ。そしてそこで生まれた熱を室内にたくさん取り出す高い熱効率は特筆すべきだと思います。
ただ、一方でモキストーブはこのように非常に特徴的な燃焼ですし、現在の薪ストーブのメインストリーム?流行?からすればあまり良く思われない方もいるのも事実かと思います。
(特にその焼却炉的な燃焼について、好みが別れるところだと思います)
それほど薪ストーブに求められる機能や価値観が昨今は多様化しています。
なので、前回偉そうに書かせて頂いたように、「薪ストーブに何を求めるか」というところがやはり大事な点なのではないかと思います。
その上で、今回紹介したiGブースター。
これがあることで完全に、例えばうちのドブレ640のような鋳鉄製ストーブのようなストーブになるかと言えばそれはノーです。
すいません、、、、でもこれは正直にそう書かせて頂かざるを得ません。
ガラス窓をきれいに保つ、低出力(空気を薄くして)でゆったりとした炎を出す、というのはやはり鋳鉄製の薪ストーブや最近の高気密化した薪ストーブに明らかに分があります。
これはもう本体の作り、構造…大元の設計思想からして違うので無理もないことです。
ただ、ノーマルのモキストーブでもiGブースターを使えばある程度それに近いニュアンスを出していける。
「いわゆる薪ストーブ」にかなりいい所まで近づけることができていました。
プラス上質な薪(と言うのもおこがましいですが)があれば尚良いです。
iGブースターという選択。製造元であるモキ製作所がこの改造パーツの存在をどう思っているかは知る由もありませんが、某ユーザーさんが開発され、愛研さんが製品化したことはモキストーブの一つの可能性を広げたのではないかと感じました。
現在、愛研さんでしか取り扱いのないパーツではありますが、この情報が今後、モキストーブを検討される方にとって良い選択の糧となればと思います。
ということで、次回は少し気楽にラスト「モキストーブで調理」を書いて一連のシリーズを締めたいと思います。
シリーズ長くなり&毎回の長文(前回6000文字、今回4000文字オーバー)で申し訳ありませんが、もう少しだけお付き合い頂けるとうれしいです。