最近、新築を考えている同僚からこんな質問を受けました。
「薪ストーブ使ってるんでしょ?いいなぁうちも入れたいんだけど…」
で、やっぱりよくあるこの質問
「燃費のいい機種はどれ?」
実は、これに関しては以前から思っていることがありまして…
それを踏まえての自分の答えは
「燃費なんてどれも同じだよ」「何を大事にするかだよ」です。
というのも、この質問をされる方は往々にして勘違いしていることがあります。
かくいう自分も最近まで曖昧でした。
燃費イコール「薪を長時間に渡って燃やせること」と勘違いしている。
いや、もしかしたら勘違いじゃないのかもしれませんけど(笑)、ともかく自分はずっと「薪ストーブと燃費」に対して違和感を感じていました。今回はそれについて書きたいと思います。…あまり面白い記事にはならないと思うので申し訳ありません。
■薪ストーブと燃費の本質
- ストーブの本分は燃焼を通じて薪のエネルギーを熱エネルギーに変換すること
- どのストーブで焚こうが焚火で焚こうが、薪の持つエネルギー自体は一緒
- あるとすればどこまで完全燃焼させられるかという、燃焼効率の差のみ
ここが恐らく揺ぎ無い根底。本質的なところになってくるかと思います。
■その熱エネルギーの取り出し方の差が、ストーブの個性
- 例えば、
- 出力10を10時間にわたって持続させる
- 出力50を2時間にわたって持続させる
- 「100のエネルギーを得た」という点では同じことです。
つまり前述の長時間にわたって燃やせるというのは、薪のエネルギーを小出しにしているにすぎません。つまり低出力長時間運転というわけです。(それが暖房としてどうなのか、低出力運転が排気のクリーンさに与える影響はまた別の問題として今回は論じません)
■燃費がいい、とは何か
この定義が一番クセモノでしょう。
- 人によっては100の熱エネルギーを短時間で取り出せること=限られた薪で部屋がすぐに温かくなる=燃費が良いと表現するでしょう。
- 人によっては10の熱エネルギーで低出力長時間運転ができる=時間に対して薪をくべる回数は減るので=燃費が良いと表現するでしょう。
■逆に燃費が悪い、とは何か
- 人によっては、10時間ゆっくり燃焼させたいのに2時間で燃え尽きてしまった=燃費が悪いと表現するでしょう。
- 人によっては、短時間で部屋を暖めて暖房効果を得たいのに温まるのに時間がかかる=燃費が悪いと表現するでしょう。
あとは、最近のストーブではほぼ性能的にクリアーしていると思いますが、「そもそもの燃焼効率が悪く、不完全燃焼しがちな機種」であれば「(熱損失が多いが故に)薪を燃やしても燃やしてもなかなか温かくならない=たくさん薪を使う」を意味して燃費の悪さと表現する場合もあるかと思います。
■一般的に「燃費が良い」の意味は
おそらく期待されることとしては
「暖房性能は確保しつつ、かつ少ない薪で長時間運転できる」
ことだと思います。
しかし、あくまで上述のように合計100のエネルギーに対して出力50で10時間持続するなんてことは、物理法則上不可能なのです。
■ストーブメーカーによって燃焼の考え方が違う
上述したように、薪の持つエネルギーをどういうタイムスパンで取り出すか。
- 高出力運転のメリットとして排気のクリーンさや即暖性を重視するのか、
- 揺らめく炎の美しさを堪能することも大事な機能と捉え低出力が運転しやすいことを重視するのか
この2つのバランスをどう取るか、というところがその機種の燃焼の特徴の一つと言えると思います。さらに言えば、
- この機種による特徴をしっかり理解することが、機種を選ぶうえで最重要
- また、業者がしっかり説明すべき点でもある と思います。
そこを疎かにして、間違っても「これは燃費がいい」「わるい」という表現のみを先行させると、おもわぬ誤解や導入後の「すぐに燃え尽きてしまう」「薪が足りない」「思っていたのと違う」につながりかねません。
なので燃費と言う言葉はこと薪ストーブの商品説明としては誤解を招きやすい、非常に危険なワードだと思います。
■この問題の背景
言わずもがな、自動車における「燃費」イメージが強力すぎるからです。
どうしてもその呪縛から逃れることはできません。
なので、いっそ薪ストーブを語るうえでは「燃費」という言葉と決別するべきではと考えます。
(自動車の場合1ℓの燃料で何キロ走れる、という話は実に明快ですが、一方で1ℓの燃料でどれほどの出力が効率的に得られるかが語られることはないのがミソですね)
■備考
ここまで書いといて何ですが、実際はもうちょっと考慮すべき点があり、例えば熱の二次利用というのはまた別の話です。中には取り出した熱でソープストーンやバーミキュライトのような蓄熱体を暖め、その再放熱によって「長時間あったかさが続く」ことに
つなげている機種もあります。(鋳物のストーブも材質上、この機能が備わっています。)また人が温かさを感じる、「感じ方」として遠赤外線効果というのも一つの要素ですが、今回は触れていません。
■あとは焚き方
なにはともあれ、機種の持っている燃焼効率の良さを最大限引き出す使い方をするのが一番大事です。ちゃんと乾燥された薪を使うこと、上手に焚くこと。
■まとめ
「燃費」という一般に良く使われる単語。しかし薪ストーブを語るうえで非常に曖昧かつ誤解を生む言葉だと思っています。薪ストーブ界は早々にこの用語から決別したほうがいいのでは…とも思います。一ユーザーのくせに生意気ですが、違和感を通り越して問題意識のような気持ちにまで至ってしまったので今回こんなつまらない長文記事になってしまいました。もしここまで読んで頂いた方がいるなら感謝いたします。ありがとうございました。
(時には真面目に…今後もよろしくお願いいたします。)