薪ストーブで冬眠したい

薪ストーブのある暮らしについて情報発信します。ときどきる育児ネタ。静岡県中部。ドブレ640CB

【検証】薪ストーブの炉内で燻製を作ってみる。

ということで、今回で締めますが
とにかく試してみましょう「薪ストーブの炉内で燻製」を。

一応お断り
今回の一連の記事はあくまで「ストーブ本体を燻製器として使ってみよう」の前提で書いています。
例えばチップと食材を入れたダッチオーブンを炉内や天板の熱で調理…という方法もありますが、それとは根本的に異なることを敢えてやっているということでご了解ください。(もちろん食材や求める燻煙温度によってはその方が適する場合もあるでしょう。)あくまでストーブの活用や燻製作りの幅を広げるための遊び心ある探求の一環ということで。

おさらい
薪ストーブの炉内を使ってみる理由として、ざっくり

 

  • 燻煙程度の熱量では炉内温度はさほど上がらないであろう
  • 煙突の効果により煙抜けが良いであろう

ことを期待して燻製器として使ってみようという魂胆です。やったことがないので正しいかはわかりません。笑

 ↓ ドブレ640CBJの断面図。ざっくりとこんな感じ。
 スモークチップないしスモークウッドの場所、それぞれ食材の位置を設定してみました。バッフル上までも活用しようという所がちょっと無茶してる感ありますが、とにかく熱源から離したいという一心からです。あと敢えて二次空気を閉じる形でスタートします。これは今回スモークウッドの配置を炉内最奥にしたため、燻煙の発生場所と空気穴が近く、部屋への漏出を懸念してのことです。

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今回、検証のために作るメニュー

① スモークサーモン
材料:近所のスーパーで買ってきたお刺身用サーモンの柵です。

f:id:mishimasaiko:20170811154035j:plain今回は簡単レシピで「塩4%、砂糖2%、黒故障、ディル」を振り、一晩漬ける。
その後、水で軽く流したあとキッチンペーパーで拭いてから、二晩ほど乾燥。
30度を超えない温度を目安に3時間ほど燻製にかける。
スモークサーモンをチョイスした理由は冷燻がちゃんと出来るか、という点の検証のためです。

② スモークチーズ
定番のチーズですが、意外にこれが難しいです。なぜなら燻煙の温度が高いとチーズが溶けてしまう。そのために多少でも溶けにくいプロセスチーズを使うことが多く、今回も似たような製品を使用しています。一度溶けたチーズは固く、風味・味も劣りますので、燻煙は乗ってるけどチーズの角は溶けていない、そんな状態を目指します。

③ かまぼこ
これはそのまんま燻すだけなのでとても簡単。かつ失敗も少なく美味しい燻製メニューの定番です。素材がキャンバスのように白く、燻製後の変化や結露の再付着が分かりやすいため、今回は「燻煙の強さ」「煙抜けの程度」を視覚化するために入れました。
ちなみに静岡ではお馴染みの「丸六かまぼこ」です。

f:id:mishimasaiko:20170811154211j:plainセッティング
上の画像のイメージで、セッティング。今回は利便性の良いスモークウッドを使用しました。 フレーバーは定番のサクラです。

↓ (上左右)ドブレ640CBJのトッププレート、インナートッププレートの順に外していきます。ドブレの凄いところはこれらパーツがボルトや溶接で固定されておらず、ただ乗っているだけなので簡単に取り外しができることです。これで十分な機密性が保たれるわけですから鋳鉄製造の技術レベルの高さの表れと思います。

f:id:mishimasaiko:20170812215139j:plain(下左右)インナートッププレートを外すとバッフル板が丸見えになります。今までここに何かを置こうという視点で見たことがなかったので気づきませんでしたが、このスペースは想像以上に狭いです。でもなんとかサーモンくらいなら置けるようでしたので、置いていました。

燻製中の様子

↓(左)炉内のゴトクにかまぼことチーズを置きます。後方でスモークウッド着火。(右)少しづつ温度が上昇し、写真では丁度30度となっています。

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↓ (左)だいぶ煙が充満してきました。予想ではもっと煙が抜けていくつもりでしたが、温度を上げたくないVSドラフトが出ないの矛盾からか、どうしても滞留は避けられないようです。(右)ちょうど曇りで分かりにくいですが、煙の量自体が少ないからか排煙はさほど目立ちません。

f:id:mishimasaiko:20170812220102j:plain計5時間弱の燻煙。温度は炉内でほぼ40度キープといったところでした。またこの間、ガラス窓の結露はみられませんでした。
トラブル発生
やはり炉内温度を上げたくない=ドラフトが発揮されない、のジレンマか、思ったよりも煙抜けが良くありません。正直、我が家の煙突性能(断熱二重煙突をストレートで長く使っている&ドブレ640の排気抵抗の少なさ)は高い方だと自負していたので、スモークウッド程度の熱でも、逆流しない程度に排煙してくれると「過信」していました。
そしてその時はきた
当日はちょうど蒸し暑く、室内は締め切ってのエアコン全開。そしてちょうど夕飯の準備もあり、IHクッキングヒーターの電源オン。同期で作動する換気扇オン。途端に室内が陰圧になり、ストーブの一次二次空気穴から煙が逆流!!!臭い室内。
やっちまいました。笑
こうなると、為す術ありませんのでとりあえず逆流の出元である給気口を閉めます。あとは換気扇オフ。窓オープン。順調に部屋が臭くなっていきます。涙

燻煙後
なんとか我慢してスモークウッドの煙が落ち着くところまできました。取り出します。

f:id:mishimasaiko:20170812222219j:plainあれ??出来上がりは思ったよりも良い?
サーモンも適度に水分が抜け、かつレア感は残り、燻煙も十分に浴びている。チーズも全く角がダレず、溶けていない。かまぼこはやはりもう少し熱い温度での燻煙が合っていると思うが、それでも十分に変色しており、表面も水蒸気の付着は感じられない。仕上がりは悪くない。

味見
味はどうだろうか…。本当は、食べるなら燻煙の落ち着いた翌日が良いのですが、我慢できないのでちょっと食べてみましょう。(サーモンにはディルを、チーズとかばぼこにはブラックペッパーを添えます。)

f:id:mishimasaiko:20170812233158j:plainこれも悪くない。今まで散々作ってきた燻製を比較しても悪くない。かまぼこも変に表面が硬くならずソフトに仕上がっているし、チーズにいたっては表面が全く溶けなかったので食感も悪くならずむしろ上出来なくらいです。ただ、サーモンはレア感はあるものの少々仕上がりが悪くホットサーモンに近い感じ。40度キープでは不十分で30度以下を目指すべき印象。

結果&問題点
・温度は熱源から近い炉内においても40度程度をキープできた。(ただ、サーモンの仕上がりをみると冷燻としては課題が残る温度だった)
・ガラス窓から内部が十分に観察でき、温度計の視認性も良かった。
・煙は予想以上に滞留し、性能の良いであろう煙突システム&ストーブ本体の力を持ってしても十分な排煙ができなかった。
・排煙自体がうまくいっていなかったからか、屋外での白煙はほとんどみられなかった。
・ガラス窓の結露や食材に対する水蒸気の付着は最小限であった。
・結果的に燻製としての仕上がりは比較的良好であった。
・逆流してしまったため、室内が煙臭くなった。(炉内も。ただこれは後でストーブに火を入れることで焼き切ることができます)

考察
考察も何もないのですが、上記の通り「スモークウッド程度の熱源では十分なドラフトが発生しない」が今回の一番の考えられる点(失敗した点)でした。一方で、炉内温度は想定した温度帯を安定してキープでき、鋳鉄の厚さや良くも悪くも温まりにくく冷めにくいという特性が功奏したと考えられました。また煙抜けが不十分だった一方、湿度の上昇(水蒸気)は問題とならないレベルに抑えられることができ、低温を維持できた温度管理面が良い方向に影響したと考えられました。
あとこれはまた推測ですが、予想以上にドラフトが得られなかったこと&屋外での排煙も少なかったことから、「排出すべきタール分や煤が煙突内に付着する原因になるのではないか」ということも新たな疑問or状況的に示唆されるのではないかと考えました。

帰結
今回の仮説「薪ストーブ(の炉内)は燻製に向いている!?」においては、
・温度管理面ではメリットがありそう
・温度上昇を抑えられるからか結露や水蒸気の発生は少ない
・湿度管理(煙抜けの良さ)については、非常に厳しい。逆流の危険性あり。
・ドラフト不十分により煙突内の汚れを残す可能性あり
・使用後の臭いがある。(ストーブシーズン中であれば、一度しっかり焚いて煙の成分を焼き切ってあげることで臭いを除去することができるが、今回のように夏季ではどうだろうか。)
・(これは蛇足ですが。準備面ではメンテナンス性に優れたドブレ640でもトッププレートを外してのバッフル上の食材設置は面倒くさい。あと置けるスペースも狭い。)

以上より今回の結論。
メリット・デメリット総合するとを「薪ストーブの炉内は燻製(というか冷燻)には向いていない(お勧めしない)」笑

わたくしのように「いろんな場所、条件で燻製を作ってみたい」「何事も自分で試さないと気が済まない」という変態の方のみおすすめします。笑

↓ やはり最強はこの自作システムかもしれない。笑

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さいごに
今回、ストーブユーザーかつ燻製を趣味とするわたくしの当然の興味「薪ストーブ+燻製」の試みの一環。毎回毎回の長文になりましたが(今回に至っては4000文字オーバー…)、もしお読み頂けた方がいらっしゃったらありがとうございました。冒頭にも書きましたが、燻製の作り方はとっても自由なものです。薪ストーブの活用においても、炉内直接燻煙だけでなくダッチオーブンや密閉容器、鍋に入れての燻煙なんかも食材や狙いによっては十分に考えられるわけです。自分としては今後も薪ストーブの活用、燻製の作り方については色々と模索してきいき、記録として残していきたいと思いますので、この失敗例や実践の記録が同好の方のお役に少しでも立てばと思います。

ということで、しばらく固い投稿が続いてしまい反省。次回から少し肩の力を抜いて更新していきま~す。

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↑ 結局、臭い消しも兼ねて使用後にがっつり焚いてしまいました。まだ8月&温暖な静岡なのに…。こんなんで薪が足りるか本当に心配。