先日、今年の煙突掃除を終えたわたくし。
今シーズンで出た煤の量を目の当たりにし、思い出しました。
(いや、忘れてたわけではないですけど…)
煙道火災って超こえーな!と。
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薪ストーブを使用しての、考えられるうちでも最悪のリスク。
それが煙道火災(煙突火災)です。
薪ストーブの炎で大切な我が家も燃やさないように。。。
またご近所にもご迷惑をかけないように。。。。
我々ユーザーが心掛けておかなければならないことを、(今一度繰り返しになりますが)まとめていきたいと思います。
(そもそも煙道火災??という人はすいませんが各自ググって下さいませ。)
■ユーザーとして出来ること
① 毎年の煙突掃除を欠かさない&トップも掃除しよう
煙突火災は内部の汚れ(煤やタール)に引火して燃える現象ですので
ぶっちゃけ燃える物が無ければ燃えないわけです。
なので煙突掃除が最も確実な対策です。
問題は頻度。
毎年行う方もいれば、数年に一度という方もいらっしゃるのが現実。
「いつも3年に一度だけど、今までも大丈夫だったからいいでしょ」
気持ちとしては分かります。
誰しもこういう正常性バイアスを持っています。
でも色々な方に話しを聞く限り、
どうやら煙道火災を起こす方ってそこに問題があるみたいなんですね。
・仮に1年の煤・タールの量が少なくても、数年に一度だと実施年を間違える可能性がある。
・2年に一度が「なんだ大丈夫そうだな」と思ってしまうと、次第に3年に一度、4年に一度になってしまう。
・毎年やることにしておけば確実。
・100歩譲って奇数年or偶数年というように忘れにくいルールを決めて2年に一回は確実に実施。
ちゃんとマメにやりましょ!煙突掃除!
そして頻度と共に大事なのが「トップも掃除する」こと。
トップを掃除する重要性についてはこちらの記事をどうぞ。
トップは排気が外気と混ざる場所ですし、煙突の末端。
当然のことながら一番排気温度が下がる場所です。
トップが詰まると一気にドラフトが落ち、排煙できなくなる=薪ストーブが新鮮な空気を吸い上げなくなる=燃えにくくなります。
そこを無理にエアー全開にして燃焼させようとするとどうなるか…恐ろしいです。
どんなに性能の良い断熱煙突でもトップは詰まりうる。
そしてトップを詰まらせない為には(究極的には)掃除しかありません。
②「よい」薪を燃やそう
針葉樹だとヤニが多く汚れやすいとか、広葉樹が良いとかそういう事も言いますが、
それ以上に大切なのがやはり「乾燥」かと思います。
よい薪=乾燥した薪。
なるべききれいな排気で煙突を詰まらせないようにしましょう。
それはつまり、完全燃焼に目指すということです。
完全燃焼するには本体の温度をしっかり上げ、クリーンバーンや触媒の機能をフルに引き出してあげることが必要です。
乾燥が甘い薪は燃焼時に水蒸気を出して炉内を冷やしてしまうため、いくら焚いてもスムーズに巡航温度にたどり着けません。
ちゃんと乾燥した薪は燃焼時に水蒸気を出して炉内を冷やすことがないですし、ちゃんと自燃焼してくれます。
※ もっと詳しい話をすると「薪のサイズや形状」も工夫がありますがちょっと長くなるので割愛。(要は大きすぎるとダメですよって話です。)
乾燥した薪なくして完全燃焼なし!!
③ 最初の薪はケチることなかれ(薪ストーブは高温で焚こう)
これも要は「クリーンバーンや触媒の機能をフルに活かして完全燃焼=排気をきれいにしよう」という話なのですけれど、
高温で焚かないとその機能は発揮されません。
その証拠に、まだ温度の低い焚き始めは必ず煙突から白煙が出ます。
(これは上手く焚いてもある程度仕方の無いことです。)
機能が発揮されるまでの時間をなるべく短くする意識。
最初の薪はケチるなかれ。
最初は必要十分な薪を使い、しっかりスタートダッシュを決めてあげることが大切。
そして巡航温度に達したら、その温度を上手く維持させながら焚くことで、よりクリーンバーン(触媒)の効果を使うことができます。
④ 必要以上に空気をしぼらない
炉内を空気を絞ると、うっすらとした炎が揺らめき美しい。
この美しさに惹かれて薪ストーブを導入する人も多いですね。
自分も大好きです。
そして更に空気を絞れば、そのぶん燃焼は進みにくくなるので
薪が燃え尽きるまでの時間が長くなる=薪が長時間もちます。
でもこれって必ずしも良いことでしょうか??
空気を薄くするという行為は一方で、
不完全燃焼に向かわせる行為
でもあります。
もちろん、ある程度の炉内温度が保たれていればクリーンバーンや触媒が働くので
そこで起こる不完全燃焼をうまく防いでくれます。
そして厳密には空気を絞ることとイコールではありませんが、これらの操作や排気スピードのコントロールで熱効率を最大限高めてあげることも「暖かさ」を得るためには必要な考え方というのも事実でしょう。
しかし、燃焼の空気をしぼった炉内はいくら本体の保温性が高くても次第に冷めていく。
冷めていくと繰り返しになるけれどクリーンバーンや触媒は働かなくなるわけです。
つまり不完全燃焼=煤やタール、臭い成分などを残したまま排煙し、煙突も汚すことになります。
先日、かわはら薪ストーブ本舗のかわはらさんに伺ったお話では「ベテランさんに多いですね、絞りすぎちゃう人」とのことでした。
もう薪ストーブなんて普通に使ってるよ、という皆さん
大丈夫ですか??
絞り過ぎてませんか??
これは自分への戒めでもあります。
⑤ 煙突は断熱二重煙突がいい。
繰り返しになりますが、煙道火災は煙突内部やトップに煤やタールといった汚れが付着することが要因です。
汚れを含んだ煙が冷えていく過程で固形化・付着するので、
すなわちこれを防ぐためには、煙突内で排気をなるべく冷やさず高温のまま排煙することが大切。
また排気を冷やさないことは、強いドラフト(上昇気流)=排煙能力=給気能力にも影響します。
それをハード面で実現するのが断熱二重煙突です。
煙突の種類って大きく3種類あります。
①「シングル煙突」というのは、鉄板1枚の煙突。
②「二重煙突」というのは、鉄板2枚で空気層を作っている煙突。
③「断熱二重煙突」というのは、二重煙突の空気層に断熱材を充填してある煙突。
以前、別の記事でこういう図を作りました。
「ただ薪ストーブを使うだけ」であれば、シングル煙突でもいいでしょう。
しかし、シングル煙突・断熱二重煙突の間には確実な性能差が存在します。
・より安全、汚れにくい
・ドラフトも強いので燃焼を助ける。薪ストーブの性能を発揮できる。
デメリットとしては、シングル煙突と比べ高価です。
薪ストーブ本体設置と合わせた初期投資はかなり差が出てきます。
(薪ストーブ本体よりも煙突の方が高いなんてこともザラです。)
ただ、高いですけれど
安全性を少しでも担保し、快適な燃焼性能を実現するためのコストとしては
けして高くない投資かと思います。
なかには当初シングル煙突で施工したけど、数シーズン使って断熱二重煙突に換装するユーザーさんもいらっしゃるそうです。
■あとがき
偉そうにポイントをいくつも挙げましたが、
とにかく1ユーザーとして「煙道火災への危機意識」は忘れず持っておきたいですね、というのが今回の記事を書こうと思った出発点です。
そして先ほどもリンクしましたが、自分も懇意にさせて頂いている(株)愛研大屋環境事務所さんのブログ「超簡単薪ストーブ料理」において、煙突火災のメカニズムを詳細に解説した記事が出ました。つい先日です。
ちょうどこの記事のリリースされたタイミングは、自分にとっても煙突掃除を終わらせ一年の煤の量を目の当たりにした時期であり、本当に煙突火災について今一度考えさせて頂く、よいきっかけになりました。長文かつ専門的名用語も多く含みますが、興味のある方は是非お読み頂けるとよいと思います。とても勉強になります。
さいごに。
煙突火災に対するリスク管理は
薪ストーブユーザーにとって「できる対策」ではありません。
・「しなくちゃいけない」対策
・知っておかないといけないマナー
なのかなと自分では思っています。
その気持ちをシビアに持ち続けること。
それがあってこその、幸せな薪ストーブライフ。
自分もユーザーとしてはまだまだですが、勉強しつつ楽しんでいきたいと思います。
皆さまもそれぞれのお心のもと、安全に楽しまれますように。
(今回ちょっと真面目に!笑 でも大切なことです。)