薪ストーブで冬眠したい

薪ストーブのある暮らしについて情報発信します。ときどきる育児ネタ。静岡県中部。ドブレ640CB

地震災害と薪ストーブ ~北海道地震に思う~

9月6日に北海道胆振地方を中心に最大震度7地震が起こりました。

被災された方々にお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復興をお祈り申し上げます。

 

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さて、何故今回このタイトルで書こうかと思ったかと言えば、、、、

 

『最近ツイッターで薪ストーブが話題』だからです。

 

実はツイッターで「薪ストーブ」なるアカウントをフォローしているのですが、このアカウント、日々「薪ストーブ」のワードが入ったツイートを機械的リツイートしてくれるんですね。

で、普段であったら一日に数件しかRTしてこないくせに、ここ最近は一日何十件もRTしてきてTLが「薪ストーブだらけ」に。なんだか妙に騒がしいわけです。

 

何事かと思い、ざっくり話を追い掛けてみました。


超ザックリ書きますと、多分こういう話。

  • 本州の人間が「道民は薪ストーブあるからいいよね/薪ストーブ使ってしのげや」のツイート及び同調する論調
  • または派生として「キャンプ気分で乗り切れ」的な論調。
  • これに「実態が分かってない」と道民が怒る。(薪確保の問題や、そもそも北海道民の家にもれなく薪ストーブがあるわけでない。そこがそもそも偏見の目で見てる。)
  • 以降、あれやこれや皆さん口々に言ってる。

概ねこんな流れであると理解しています。

違っていたらすいません。

 

とにかく、この件で随分「薪ストーブ」という単語の入ったツイートが普段以上に発信され、検索されていることは事実のようです。


自分としては、もしツイッターで発言しようものならヘタしたら炎上必死のご時世ですし、当然この件に深く言及するつもりはありません。

 

ただ、感じたこととして、

  • 当然だが、一般には薪ストーブという暖房器具の特性や実態がほとんど理解されていない。

んだなぁ、と感じました。

 

あと

  • 開放型暖炉と薪ストーブとキャンプ用のストーブとごちゃごちゃにされている
  • 薪は乾燥が必要なことが理解されていない
  • 煙突の重要性が理解されていない

あたりも。


繰り返し、敢えてこの論争?に首を突っ込もうとは思いませんが、

折角の機会ですので、「一ユーザーとして今一度、災害と薪ストーブの関係を考えてみよう」と思った次第です。


■前提として、木質燃料系暖房の分類

薪ストーブも近年のブームにより、新築物件を中心に設置が進みましたので「薪ストーブのイメージ」を持っておられる方も多いと思います。

そう、開放型暖炉と同様に設備として備え付けられた薪ストーブです。

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しかし最近はキャンプブームもあり、キャンプ用の持ち運び可能な薪ストーブのことを指して「薪ストーブ」と呼ぶことも多くなってきているようです。

 この2つは、薪を燃やして暖房とする点は同一ですが、煙突設備における諸条件がかなり異なる為、今回は同列に扱わないこととします。

 

開放型暖炉:暖炉

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住宅設備としての薪ストーブ:薪ストーブ

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屋外用、搬出可能な薪ストーブ:屋外用ストーブ

 と呼称させて頂くことにします。

 

■災害時における薪ストーブのメリット・デメリット

パッと思いつく感じこんなところでしょうか。開放型暖炉は外しました。

薪ストーブのメリット・デメリット

○メリット

・電気ガスといったライフラインに関わらずスタンドアローンで使用できる

・暖房としてはハイカロリーで強力(ただし、薪の乾燥度、焚き方、煙突性能、建物の間取り・機密性断熱性など変動要因は多い)

・本体の素材(鋳鉄、ハースストーン等)によっては蓄熱し、燃焼終了後も暖かい。

・天板や炉内を熱を使って調理器具としても活用できる

・夜間は炎の明かりで照明の役割も。(ただし光量は不十分)

 

▲デメリット

・煙突、炉壁など事前にしっかりとした施工が必要なため、購入してすぐに使える道具ではない

・薪が必要(=薪を確保する手段、ストックするスペースの確保、薪はしっかり乾燥していないと使えない。生木×)

地震で本体が動いて危険となる可能性がある地震後の使用前に安全確認が必要

地震で煙突が外れ使えなくなる可能性がある地震後の使用前に安全確認が必要

・屋外には持ち出せない

・高価(本体・煙突・炉壁等で100万前後掛かるのが一般的)

 

キャンプ用薪ストーブのメリット・デメリット

○メリット

・電気ガスといったライフラインに関わらずスタンドアローンで使用できる

・屋外使用が前提の為、煙突・炉壁などの事前工事が不要、薪さえあれば購入してすぐに使える

・暖房としてはハイカロリーで強力(ただし、本体サイズ、薪の乾燥度、焚き方など変動要因多い)

・天板や炉内を熱を使って調理器具としても活用できる

・夜間は炎の明かりで照明の役割も。(ただし光量は不十分かつ屋外のみ。)

・比較的安価(数万円から購入できる)

 

▲デメリット

基本的に屋内では使えない(煙突の施工をきちんと行わないと一酸化炭素中毒になる恐れがある)

・薪が必要(=薪を確保する手段、ストックするスペースの確保、薪はしっかり乾燥していないと使えない。生木×)

 

こんなところでしょうか。探せばもっとあるような気もしますが。

 

■結局、薪ストーブは災害時にどうなのか

やはり、薪ストーブはじめ木質燃料を燃やす最大のメリットは電気が止まった時に、「プロパンガスや灯油などと同じように暖房・調理の代替エネルギーになる」ことですね。

 

いざと言うときに代替できる心強さ。

 

  • 電気:用途は広いが停電になるとアウト、太陽光発電も夜間は使えない。
  • 都市ガス:パイプ網がやられたらアウト。
  • プロパンガス:スタンドアローンで使用できる。料理用コンロ、給湯と用途が広い。
  • 石油(灯油):暖房・給湯はパワーがある。

 

電気はオールマイティで何にでも使える優れたエネルギーですが、スタンドアローンではない所がネック。太陽光発電も昼間しか使えない。蓄電池はまだ高く普及していません。

 

ただ、薪ストーブがプロパンガスや灯油に対してまでも優位性があるかと言うと、多分ない。

 

とにかく災害時は様々なものが限られてくるので「何か他で代替出来るエネルギー」があるならそれも使うべきだし、リスク分散の観点からもそれに越したことは無いでしょう。

しかし、あえて比較するのであれば安全性や薪の調達コスト等々、様々な要素を比較した上でやはりガス、灯油でしょう。

 

当たり前です。

薪ストーブが近年ブームになり設置が増えたのは暖かいという「実益」に加え、その「趣味性」によるところも大きいわけですから。良くも悪くも100%実用品ではないわけです。

 

なんだか、薪ストーブをディスっているような感じになってきてしまいましたが、あくまで「優位性はどうだろう?」という意見であって、「代替性による価値」はありますのでその辺よろしくお願いいたします。笑

 

(例えば家も非常用に一台こういう石油ストーブを倉庫に入れてあります。コロナのRXシリーズは電源を使用しないタイプなので停電時も使用できます。)

 

 

■薪ストーブは地震災害に強いのか

で、うちにも薪ストーブがありますので、「地震災害に薪ストーブという設備は強いのか」をもう少し細かく書かせて頂くと、

あまり強いとも言えないんじゃないか。

これが素直なところです。

 

例えばここでは地震としますが、発災時にまず考えるべきこととして

「揺れで本体が倒れる・滑る」この危険性が挙げられます。

 

施工店によっては本体の固定に工夫されている所もあるようですが、基本的には本体の重みのみ+煙突の固定に頼って設置されてることが主かと思います。(うちもそうです。)

 

仮に固定が縦揺れ横揺れに耐えられなかった場合、100キロ超の鉄の物体が倒れ、横揺れでリビング内に向かってくる危険。

さらに燃焼中であればその危険性は…?

 

うちも幼児がおりますのでちょっと考えたくない事態です。

 

まぁ、それでもなんとか揺れに耐えたとします。

では、被災でライフラインが断たれた中、薪ストーブを活用しようとした場合、先ず何をすべきか。それはまず「煙突が無事かどうか」を確認するここに尽きます。

仮に煙突が折れてしまったり、外れてしまっていたりする状態で薪ストーブを燃焼させることは、火事の危険性が極めて高いため、まずはその安全性を確認するところから始まります。

 

うちは1階2階が吹き抜けですので、まだ目視確認がしやすいです。

(厳密には屋根抜きの箇所に化粧版がありますので、そこを外して確認すべきでしょう。)

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煙突を屋根出しでなく、壁だししていても(普段の燃焼性能は落ちますが)煙突の安全確認はしやすいでしょうね。

 

これが2階床を貫通していたり、屋根裏を貫通させた施工の場合どうしても目で見えないスペースにも配管することになります。緊急時にそこ(屋根裏など)にあがって安全を確認することができるか、という問題です。

 

そう考えるといかに煙突施工にこだわるか、というのも自然な話で、例えば薪ストーブブログ界では有名な「かわはらさん」も独自の施工法を確立されています。

kawahara-stove.com

 

地震などの災害も考慮しどのような施工をするのかは、今後導入を検討するユーザーにとっても必要な視点かと思います。

 

■まとめ

薪ストーブというのは、「暖かい」「料理にも使える」といった実益もある一方、「炎がきれい」「癒される」など、「趣味性の高い」物でもあります。

 

そのため、薪ストーブ、屋外用のキャンプストーブ問わず、いざと言うときにある程度「他のエネルギーを代替し補完する」能力はありますが、それらを越えて万能に使用できるものではありません。

 

また、「薪」という燃料の特性上、生木は燃えませんので乾燥してある薪を入手しなければなりませんし、一冬で使う量も膨大です。その入手ルート、補完スペース等を考慮しておかなければなりません。

上述の通り、地震災害自体にストーブ本体と煙突施工が耐えられるかという問題もあります。

 

我が家も薪ストーブを愛用していますが、こと災害に対してはこれらを理解した上で今後も使って行きたいと思っています。

 

まだ書き落ちている箇所もあるかもしれませんが今日はとりあえずここまで。

なにかの参考になれば幸いです。

 

(でも、災害時に家族を守ることを考えると最終的にはこういうの欲しくなりますよね~~。お値段も以前よりは安くなってきましたし。)