前回、乾燥の仕組みについて書きました。
その続きでちょっと面白い話を。
■木は水の中でも乾燥する?
前回、薪の乾燥におけるファクターを「温度」「風通し」「湿度」と書いたじゃないですか。
その中でも「湿度」。
そう、乾かす為には極力濡らさないほうがいい。
なので雨に濡らさないように薪棚に「屋根」をつけるんですね。
そこで今回のテーマ。
この写真です。
(出典:農林水産症林野庁Webサイト)
見たことありますでしょ。
いわゆる貯木場ですね。
山間部で伐採した木を水運して河口付近で留め置いていたアレです。
今は国内林業の衰退と物流の変化で水運と共にみられなくなりつつありますが、東京では新木場が有名なように地名として残っている地方も多いことと思います。
(元々の木場は隅田川河口、後に設けられた新木場は荒川河口ですね。)
薪の乾燥と同様、木材を良い建材にするためにも「乾燥」は極めて大切。
乾燥させるため、こうやって水に漬けておいたのです。
(もちろん単純にストックしているだけの場合もあります)
もう一度言いましょう。
乾かすために水に浸ける。
なんだか矛盾しているようですが、これが先人の知恵なのです。
■水中乾燥の仕組み
ということで種明かしです。
話としては、
「一定期間水に漬けておく事で後の乾燥が進みやすくなる」
ということなのですが…理屈としては調べていくと複数の説があって。
- 樹液や樹脂、アクの成分が抜け、導管や毛細管の通導性が確保されることによって水から揚げたあとの乾燥が早くなる説。
- 水中に保存することで、細菌が細胞壁の壁孔壁が破壊し、乾燥性が向上する説。
- 結合水が自由水に置き換わり、後期乾燥期間が短くなる説。
もしかしたら①~③も結局同じ事を言っているのかも知れませんが、なんせ物好きな素人が好奇心で調べてるだけですので、断定せず一応分けて記載してみました。
①が有力というか、一般的に 言われている内容のようですね。
②木は自らの体から水分が抜けるのを防ぐため、細胞壁を閉めて水が外に出ないようにする性質がありますが、それを破壊するために水に浸けるというのも理に適っている様に思えます。
まぁ、理屈の真相はちょっと分かりかねるところがあるのですが、
とにかく
「水中乾燥を行うことで、長期間掛かる結合水の乾燥を短縮することが出来る」のです。
先人が経験則を重ねて培った、まさに「知恵」ですね。
■薪への応用
ここで話を薪の乾燥に戻します。
薪ストーブユーザーにとって恐らく頻出の話題だと思うのですが、
「薪は濡らしてはいけないのか」
「雨ざらしの薪は乾燥しないのか」
というものがあります。
ほら、これでまた冒頭の乾燥の条件「湿度」の話に逆戻りですよ。
ちょっと面倒くさくなってきましたね。笑
結論としては、上記の「水中乾燥」のメリットを引用する形で
- 乾燥初期に浸水させることで、その後の乾燥を促す効果がある。
- つまり濡れっぱなしはダメ。最終的には「濡らさない」環境が大切。
ということになろうかと思います。
実際、薪ストーブユーザーの中にも薪割り後の一定期間、
「屋根のない棚に積んで雨ざらしにする」方々が一定数いらっしゃるようです。
おそらくこの「水中乾燥」のメリットを取り入れたものと思います。
そして自分も検証こそしていませんが、確かに最初期に雨ざらしにした薪は完成時の乾燥度が高いような感覚を持ちつつあります。
同じ期間乾かした薪なのに、実際に含水率計で計ってみると結構違うとかね…
■まとめ
ま、今回も小話ですのであまりまとめることもないのですが、、、
乾かすために濡らす。
どうです。
奥深い世界じゃないですか。
もうね、薪ストーブ始めるとこういう話が大好きになりますよ。
ウェルカム!!
(そして何度も言いますが、人間は乾かさないように水分摂取がマスト!ヨロシク!)
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