薪ストーブの調理は大きく「炉内調理」と「天板調理」に別けられます。
炉内の炎が落ち着いて熾き火にならないと行えない炉内調理に対し、
ガンガン焚いた状態でも行える「天板調理」。
天板に鍋を乗せたりヤカンを乗せたりする光景は
「まさしく薪ストーブのある暮らし」のイメージですよね。
今回はその天板調理に関する重大事項…
「ドブレ640CBは天板温度が低い」
この問題に対する最大の裏技「インナートッププレート外し」について書いていきたいと思います。
■薪ストーブの機種によって天板温度は異なる
当ブログではもう何度も説明していることなのですが、我が家の愛機ドブレ640CBの天板は「そんなに熱くならない」機種です。
これは設計上の宿命と言うか、薪ストーブの機種によって違うのですが、具体的には天板の構造の差です。
「天板の温度」=天板が一層構造か二層構造かによって異なるわけですね。
・一層構造の場合=天板は高温に。
一層構造の場合は、炉内の炎が直接天板の裏に当たるため高温になります。
機種で言うと、
・バーモントキャスティング アンコール等
・ヨツール F400等
・モキ MD80Ⅱ
・ドブレ SL700(※惜しまれつつ絶盤になりました。)
他にも沢山ありますけど、ぱっと思いつくのはこんな所でしょうか。
機種によっては400度を越す高温になりますので、天板で炒め物や揚げ物、炊飯も可能です。
十分な熱量がありますので、こんな分厚く重量のある鍋でも楽勝で使え、非常に調理性能は高いと言えます。
・二層構造の場合=天板温度はそれなりに
二層構造の場合は、炉室と天板の間に空気層を挟むため、そこまでの高温にはなりません。
うちのドブレ640CBでは巡航温度で200度付近。がんばって瞬間的に250度といったところですね。
200度がどの程度のパワーかと言うと、時間を掛ければお湯が沸く火力。
鍋の保温やトロ火~弱火の料理は十分可能ですが、高温で炒めるとかはちょっと厳しい感じです。
限られた熱を無駄なく使うために、使う鍋は銅鍋やアルミ鍋といった熱伝導率の高いものをチョイスするのが良いですね。
特に銅鍋は極めて熱伝導が良く、少ない熱量でもお湯を沸かすことが出来ます。
なによりカッコいいですし。
・その他(例外)
二層構造を採用していながらも、炉内の熱を天板に伝える装置を備え、調理性能を確保している機種もあります。
有名なところではネスターマーチン。輸入代理店のネスターマーチンジャパン(旧 京阪エンジニアリング)がB-TOPという装置を開発して天板調理を可能にしています。
あとは岡本のAGNIなんかも天板直下の触媒の熱を天板に取り出す「クッキンググリドル」を備え、調理性能を確保しています。
■天板温度は調理性能に直結する
前述の通り、天板温度がどこまで上がるかはそのまま調理性能に直結します。
・一層構造:天板で炒め物や揚げ物、炊飯が可能。
・二層構造:時間を掛ければお湯が沸く程度。鍋の保温やトロ火の料理は可能。
しかし、そこは工夫次第。
使う鍋の材質やメニューのチョイスでカバーしようと、いろいろやってきたのが当ブログの道のりでもあります。
この火力を逆手にとって最適なメニューを探してみたり、、、、
極め付けはメスティン(アルミ飯ごう)でご飯だって炊きました。。。。。
※なんとか炊けました。笑
ただ、やはり「限界」があるのも事実。
天板温度が高い機種はいいな~と思うことも正直のところありました。
そこで今回はこの天板温度のリミッターを外してみたいと思います。
その名も「必殺!インナートッププレート外し!」
■ドブレ640CBの天板を高温にする究極の裏技「インナートッププレート外し」
実はドブレ640CBの天板は簡単に外せます。
この辺がドブレの凄いところなのですが、天板は乗っているだけ。
ボルトも溶接も無く、ただガスケットロープと天板の重量だけで機密性を確保しています。少しでも歪みがあればそこから計算外の吸気が流入することになるため、鋳物の製造品質が相当高くないと出来ない設計と思われます。
ということで、これがその名機ドブレ640CB。
ドブレのロングセラー、大ヒットモデルです。
※最近640WDにビッグマイナーチェンジを果たし、現行はそちらになります。
この天板を外しますとアラこんなお姿。
実はここにもう一枚取り外せるプレートがあるのですね。
写真中央に位置する「インナートッププレート」です。
何か色々書いてありますね。
実に6ヶ国語で一行ずつ書かれている内容、
要は「これは外すなよ」と書いてあるわけですが…
でも、外します。笑
外すとこうなります。
中に見えているのが炉室の直上で炎を切り替えしているバッフル板。
バッフル板に炎が当たり、上に回りこんで煙突に抜けていく構造になっています。
つまり、インナートッププレートを外すということは
「煙突に抜ける炎や熱を直接、天板裏に当てる」ことに他なりません。
理屈としてはほぼ一層構造の天板になりますから、
ノーマル状態では実現できない高温にもっていくことが可能となります。
これがドブレ640CBの最大の裏技「インナートッププレート外し」です。
・その威力やいかに
ということで今季は試験的にインナートッププレートを外して運用しています。
前回の「土鍋で焼き芋」の記事で掲載していますが、この画像をご覧ください。
脅威の350度オーバー!!!
通常のドブレ640CBでは到底考えられない天板温度です。
(頑張れば400度近くまで持っていけると思いますが、ちょっと「怖い」面もありこの辺りを上限にしています。)
正直、この温度があればかなりメニューの幅も広がりますね。
天板の上に土鍋置いて焼き芋焼くとかも可能!
■かわはらさんのブログでも紹介されている
この件については薪ストーブブログ界のレジェンドかわはらさんのブログでも過去に紹介されています。
(というか自分もかわはらさんのブログで知りました。笑)
そして凄いのは、そもそも「何故取り外し厳禁なパーツが簡単に取り外し可能になっているのか」という疑問に対しても、実際にベルギーのドブレ社を訪問されレポートされていることです。これは必読です。
ドブレ社の欧州での製品ラインナップと関係があったわけですね。非常に面白い内容です。
■インナートッププレートを外すデメリット
なんか良いことばかり書いてしまいましたが、大事なことを思い出してみましょう。
そう、6ヶ国語で書かれていたこの言葉。
「インナートッププレート外し」はメーカーは推奨していない使い方、、というか禁じた使い方になります。
※といっても実は○○○的には黙認?OK?な秘密情報も掴んではいるのですが、ちょっとオフレコ。笑
なので各自、自己責任のもと行っていただく使い方になります。
その上で具体的にどんな不具合につながるのか簡単に解説していきたいと思います。
・燃焼効率が若干落ちる?
これについては両論あるようです。
- 本体の温度が下がりやすくなり、燃焼効率が低下するのではないかという意見
- 燃焼炉からの熱回収ではなく、排気途中での熱回収のため影響は無い、あっても無視できるレベルという意見
一方で、ストーブ本体から室内への熱取り出し量は増えるため、仮に燃焼効率が下がっても一方で熱効率は上がるという意見も。
自分も今シーズンは外して運用していますが、燃焼効率は無視できる程度の変化、むしろ室内への熱回収(熱効率)は向上していると感じています。
・天板の寿命が短くなる?
炎が直接天板の裏に触れることで従来より高い温度に晒されます。特にインナートッププレート上である天板中央がより局所的な高温となることから、通常使用するよりも天板の熱変形や歪みが発生しやすく寿命を縮めるのではないかと指摘されています。
このリスクについてはうちのドブレ640CBを設置して下さったメトス特約店のアート工房さんからも伺いましたので、そうなんだろうなという気はしています。単年では問題なくても数年使っていく中で変形していく恐れは十分あります。
ただ、その場合は天板のパーツのみ取り寄せて交換するという手もあります。
取り寄せて乗せ換えるだけですので、ボルトも耐火セメントもいらず工賃も発生しません。これが出来るのも天板が簡単に分解できるドブレ製ならではのメリットですね。
ちなみに天板だけの部品単価は25000円くらいだったと記憶しています。(今は違うかもしれませんし、購入店によっても違う可能性があります。あやふやですいません。)
【注意①】最近640CB系の後継機640WDがリリースされ、現行製品はそちらになりました。640CBと640WDはデザインこそ酷似していますが、細かい点はかなり相違があるようで、部品の共通性も思ったより無さそうです。従って640CBに適合する天板のパーツ供給がいつまで可能かは不透明な状況です。もし天板パーツのみ取り寄せたい場合は、早めに施工業者に連絡を取られるのが良いと思われます。自分も来シーズン以降もインナートッププレートを外した運用を続けるようであれば早目に一枚確保しておこうかなと思っています。
【注意②】現行の640WD系ではインナートッププレート自体が廃止され炉内を露出させることが出来なくなりましたのでドブレ640CB/760CBのみで行える裏技となります。
■まとめ
名機ドブレ640CBはほとんど弱点のない優れた薪ストーブですが、「天板の温度がもっと上がればな~」と思われているユーザーさんも多いのではないでしょうか。
そんな方に、自己責任にはなりますが天板を一層構造にして高温を実現する裏技?禁じ手?の「インナートッププレート外し」を紹介しました。
かなり行える料理の幅は広がります。
「是非やってみてください☆」とはちょっと言えませんが、、、ご参考にして頂ければ幸いです。
(今回も4000字オーバー…毎度長文のお付き合いありがとうございます。)